SGLT2阻害薬の主な種類 この中では、フォシーガとジャディアンスが慢性腎臓病に対する効能または効果が承認されています。
第Ⅲ相DAPA-CKD試験においてフォシーガは、CKDステージ2~4、かつ尿中アルブミン排泄の増加を認める患者さんを対象に、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEi)もしくはアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB) との併用で、腎機能の悪化、末期腎不全 への進行、心血管死または腎不全による死亡のいずれかの発生による複合主要評価項目のリスクを、プラセボと比較して、39%低下させました (絶対リスク減少率 [ARR]=5.3%, p 9。フォシーガの安全性と忍容性は、これまでに確認されている安全性プロファイルと一貫していました。
フォシーガ は、 および においても2型糖尿病合併の有無に関わらず、CKDの治療薬として承認を取得しており、現在世界のその他の国においても審査が進行中です。フォシーガは2型糖尿病成人患者さんの血糖コントロールを改善する食事および運動療法の補助療法、および1型糖尿病 の成人患者さんに対するインスリンの補助療法を適応としています。また、本剤は2型糖尿病合併の有無に関わらず、左室駆出率が低下した慢性心不全の成人患者さんの治療薬としても承認されています。
アストラゼネカの子会社であるアストラゼネカ株式会社は、2013年、フォシーガに関して、小野薬品工業株式会社 と日本におけるコ・プロモーション契約を締結しました。本契約に基づき、小野薬品工業株式会社はフォシーガの日本における流通および販売を担い、アストラゼネカ株式会社と2型糖尿病、1型糖尿病および慢性心不全においてコ・プロモーションを実施しています。両社は慢性腎臓病においてもコ・プロモーションを行います。
フォシーガ錠10mg(アストラゼネカ株式会社)の基本情報・副作用
アストラゼネカのバイオファーマ研究開発担当エグゼクティブバイスプレジデントであるMene Pangalosは次のように述べています。「本承認は、慢性腎臓病の患者さんの予後を改善するという当社の目標の実現に向けた重要な一歩となりました。当社は、フォシーガのような新薬によって標準治療を向上させるとともに、時に患者さんを衰弱させ、生命を脅かす慢性腎臓病の予防および早期診断にも取り組んでいます」。
重度の腎機能障害のある患者又は透析中の末期腎不全患者では本剤の血糖降下作用が期待できないため、投与しないでください。
腎機能障害のある患者においては経過を十分に観察し、糖尿病の血糖コントロール改善を目的として使用している患者においては、継続的にeGFRが45mL/min/1.73m2未満に低下した場合は投与の中止を検討してください。
本剤の糖排泄効果は腎機能に依存するため、継続的にeGFRが45mL/min/1.73m2未満に低下した患者では、本剤の血糖降下作用が十分に得られない可能性があります。
ということが発表されました。この研究結果をうけて、2021年8月にフォシーガ®は「慢性腎臓病(未
7.用語解説:
(注1)SGLT2(Sodium/glucose cotransporter 2)阻害薬:
SGLT2阻害薬は、腎臓の近位尿細管でのブドウ糖の再吸収を担うSGLT2という輸送体の作用を抑制し、尿への糖の排出を促進
することで血糖を下げる作用を発揮します。日本では2014年から保険適用され、現在(2022年8月)では6種類が使用可能で
す。2型糖尿病の症例を対象としたEMPA-REG OUTCOME試験によって、SGLT2阻害薬であるエンパグリフロジンが、プラセボ
群と比較して、心血管イベントや総死亡を有意に低下させるのみならず、腎イベントを抑制する腎保護作用を有している可能
性が示唆されました。それ以降、SGLT2阻害薬の心血管イベントや腎イベントの抑制効果が多くの大規模臨床試験で報告され
ました。糖尿病治療のみならず心不全や慢性腎臓病など幅広い生活習慣病治療に適応が拡大してきています。
SGLT2阻害薬は心不全でも腎障害でも頼りになるマルチプレイヤー
(3)社会的意義
本研究は、糖尿病だけでなく慢性腎臓病や循環器疾患に対する主要な薬剤としてSGLT2阻害薬への期待が高まる中で、SGLT2阻害薬の各薬剤間における腎保護作用が同等である可能性を、大規模なリアルワールドデータで示しました。これまでエビデンスの乏しかった臨床の現場、とりわけ腎臓領域に貴重なエビデンスを提供することができたと考えています。本研究が、糖尿病や腎臓病などの疾患をもつ患者さんのQOL(Quality of Life)改善、そして健康寿命の延伸に貢献していくものと期待されます。
であるとされ(「フォシーガ錠 5 mg 他 1 品目」審査報告書〈平成 26 年 1 月 6 日〉)、また初回承認時
(2)研究の内容
2005年1月から2021年4月までにJMDC Claims Database(注6)に登録され、登録後、4か月以上が経過してから糖尿病に対してSGLT2阻害薬が処方され、透析治療歴のない12,100症例(年齢中央値53歳、84%が男性、HbA1c中央値7.5%)を解析対象としました。6種類のSGLT2阻害薬について、それぞれ、エンパグリフロジン(empagliflozin)は2,573症例、ダパグリフロジン(dapagliflozin)は2,214症例、カナグリフロジン(canagliflozin)は2,100症例、それ以外のSGLT2阻害薬は5,213症例(イプラグリフロジン(ipragliflozin)2,636症例、トホグリフロジン(tofogliflozin)1,467症例、ルセオグリフロジン(luseogliflozin)1,110症例)に対して処方されていました。
平均観察期間773 ± 477日の間に、年齢や性別、併存疾患やその他の糖尿病治療薬で補正した解析で、エンパグリフロジン、ダパグリフロジン、カナグリフロジン、その他のSGLT2阻害薬の間で、腎機能の指標である推算糸球体濾過量(eGFR、注7)の年次変化量を比較しましたが、薬剤間において有意な差は認められませんでした(図1)。この結果は、SGLT2阻害薬の腎保護作用が薬剤間で共通しているクラスエフェクトであることを示唆しています。
・ 糖尿病合併CKD患者:アルブミン尿(蛋白尿),腎機能に関係なく腎保護効果が期待されるため,クリニカルエビデ
4.発表内容:
(1)研究の背景
SGLT2阻害薬は糖尿病治療薬として開発されましたが、大規模臨床試験において(糖尿病の有無に関わらず)腎保護作用を有していることが示され、2021年以降にSGLT2阻害薬の適応は慢性腎臓病に対しても拡大されています。臨床現場でのニーズが高まったことから、SGLT2阻害薬の処方数は増加し、国内では現在6種類のSGLT2阻害薬が糖尿病への適応を有していますが、SGLT2阻害薬の薬剤間で腎保護作用を比較した研究は少なく、SGLT2阻害薬の腎保護作用が、クラスエフェクトと考えて良いのかについては議論が分かれるところでした。そこで、今回、国内最大規模のレセプトデータベースを用いて、糖尿病に対して新規にSGLT2阻害薬が処方された約12,000症例を対象に、個々のSGLT2阻害薬の薬剤間で腎機能の経時的な変化量を比較しました。
腎臓病)慢性腎臓病(CKD)の治療(前編) | 亀田グループサイト
3.発表概要:
糖尿病(注4)の治療薬として開発されたSGLT2阻害薬は、腎臓にある近位尿細管での糖の再吸収を阻害し、糖を尿から排出することで血糖値を下げる薬剤です。SGLT2阻害薬は、これまでの大規模臨床試験において、慢性腎臓病(CKD、注5)の症例に対して腎保護効果が示されたことから、腎臓病の治療薬としても注目を集めています。国内では2014年以降、6種類のSGLT2阻害薬が保険適用され、糖尿病の治療薬として処方されています。SGLT2阻害薬の薬剤間で効果に差が生じるのか、それとも共通の効果(クラスエフェクト)を示すのかについては臨床におけるエビデンスが少ないため、こうしたエビデンスの蓄積が望まれています。
そこで、東京大学の小室一成教授、金子英弘特任講師、南学正臣教授、康永秀生教授、岡田啓特任助教、鈴木裕太研究員および、佐賀大学の野出孝一教授らの研究グループは、国内の大規模なレセプトデータベースを用いて、新規にSGLT2阻害薬が処方された約12,000件の糖尿病症例を解析し、SGLT2阻害薬間で、腎機能の経時的な変化量に有意差がないことを示しました。なお、本研究グループは、糖尿病症例における循環器疾患発症率がSGLT2阻害薬の薬剤間で同等であることを報告していますが(Cardiovasc Diabetol. 2022 May 18;21(1):67. ※)、これらの結果も合わせると、SGLT2阻害薬の腎保護作用あるいは心保護作用がクラスエフェクトであることが示唆されます。本研究成果は、今後の糖尿病、慢性腎臓病、循環器疾患の治療におけるSGLT2阻害薬の使用を考えるうえで、重要なリアルワールドエビデンスになることが期待されます。
なお本研究は、厚生労働省科学研究費補助金(厚生労働行政推進調査事業費補助金・政策科学総合研究事業(政策科学推進研究事業)「診療現場の実態に即した医療ビッグデータを利活用できる人材育成促進に資するための研究」課題番号:21AA2007、研究代表者:康永秀生)の支援により行われ、日本時間8月9日に国際腎臓学会(ISN)の学会誌「Kidney International (Article in Press)」に掲載されました。
『研究課題名 SGLT2阻害薬における腎機能別の臨床効果と腎保護作用に関連する因子の
2.発表のポイント:
◆SGLT2阻害薬(注1)は、近年の研究から腎保護効果を有することが示されていますが、薬剤間で腎保護作用を比較した研究は少
なく、効果の差の有無は明らかではありません。
◆本研究では日本人のリアルワールドデータ(注2)分析を行い、糖尿病に対して処方されたSGLT2阻害薬間で、腎機能の経時的な
変化量に有意差がないことを新たに報告しました。
◆その結果、SGLT2阻害薬の腎保護作用はクラスエフェクト(注3)であることが示唆されました。
慢性腎臓病の治療薬フォシーガについて考える【腎臓内科医が解説】
1.発表者:
小室 一成 (東京大学大学院医学系研究科 循環器内科学/東京大学医学部附属病院 循環器内科 教授)
金子 英弘 (東京大学大学院医学系研究科 先進循環器病学講座 特任講師)
南学 正臣 (東京大学大学院医学系研究科 腎臓内科学/東京大学医学部附属病院 腎臓・内分泌内科 教授)
康永 秀生 (東京大学大学院医学系研究科 臨床疫学・経済学 教授)
野出 孝一 (佐賀大学医学部 循環器内科 教授)
森田 啓行 (東京大学大学院医学系研究科 循環器内科学/東京大学医学部附属病院 循環器内科 講師)
武田 憲文 (東京大学大学院医学系研究科 循環器内科学/東京大学医学部附属病院 循環器内科 助教[特任講師(病院)])
藤生 克仁 (東京大学大学院医学系研究科 先進循環器病学講座 特任准教授)
岡田 啓 (東京大学大学院医学系研究科 糖尿病・生活習慣病予防講座 特任助教)
鈴木 裕太 (東京大学医学部附属病院 循環器内科 研究員/国立保健医療科学院 研究員)
SGLT2阻害薬「フォシーガ」の第3相DAPA-CKD試験 慢性腎臓病患者を対象とした有効性により早期終了 ..
交通アクセス
JR・山陽電車「明石駅」下車
神姫バス 明石駅[東3番]乗り場から西神中央駅、三木・社、押部谷方面ゆきに乗車、「変電所前」で下車、枝吉交差点を西へ徒歩約5分