尿路性器感染症 (Genitourinary tract infections)


泌尿器科に受診するような梅毒は第一期梅毒です。初期硬結として局所に硬結を作り、やがて潰瘍を形成します。通常痛みが無く、放置していても2~3週間で消失します。この段階で放置すると第二期梅毒となるまで症状が出てきません。第二期梅毒では血行性にトレポネーマが全身性に播種され、多彩な発疹が全身に出現します。梅毒感染の場合HIV感染も併発していることが多く注意が必要です。診断には梅毒血清反応としてカルジオリピンを抗原としたRPRに加えて、TPHA法、またはFTA-ABS法を行います。治療にはペニシリン製剤がよく効きます。ABPCやAMPCの経口剤、ミノサイクリンも使用することがあります。通常2~4週間の投与が必要とされます。TPHA等は陰性化しないことがほとんどですが、カルジオリピンを抗原とした検査による抗体価が治療効果を反映しますので8倍以下になるまで治療を継続します。


淋菌感染症で泌尿器科を受診する場合、尿道炎として受診される方が多いです。放置していた場合は精巣上体炎となって受診する方もいます。淋菌による尿道炎における排尿時痛は非常に強く、火であぶった火箸を尿道につっこんだような痛さらしいです。尿道から膿が常に排出されるような状態で、いつも精液を垂出しているgono:精液とrrhea=流出を併せてgonorrhoeaeと名付けられています。診断として、現在は核酸増幅法で尿から淋菌を検出することが出来ますが、以前は綿棒を尿道口に差し込んでスワブを採取していました。また、尿沈渣のグラム染色にてグラム陰性双球菌の検出は最も早く結果が出ます。無論、これだけで淋菌と確定は出来ませんが症状などと考え合わせれば診断の一助となります。治療は淋菌に有効な抗生剤を使うことですが、本邦では淋菌の抗生剤に対する耐性化が進んでおり、特にキノロンに対する耐性率は80%ほどになり、キノロンは全く使えません。現在、有効な薬剤はセフトリアキソン、セフォジジム、スペクチノマイシンの3剤のみです。

泌尿器科で扱うことの多い疾患の中に性感染症が含まれます。性感染症とは性行為によって伝播する感染症の事を言います。以前は梅毒や淋病など、性器に症状が出現する疾患のことを指していたために泌尿器科で扱う事が多くなっていましたのですが、広義の性感染症を起こす原因微生物は実に多彩です。性感染症をきたす主な病原微生物として、梅毒スピロヘータ、淋菌、クラミジア等の細菌類に加え、単純ヘルペスウイルス、ヒトパピローマウイルス、HIV、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、サイトメガロウイルス、EBウイルス、HTLV-1のようなウイルス類、トリコモナス、アメーバ赤痢、ケジラミ、疥癬のような原虫・寄生虫まで含まれます。当然のことながら症状も多彩で、尿道炎、精巣上体炎、子宮頸管炎のほか、咽頭炎、結膜炎、直腸炎なども入ります。尿道炎の症状や性器に潰瘍やいぼを作ったりする感染症は自分でも見つけやすいと思われますが、HIV感染症や肝炎ウイルスの感染症などは他の病原体による感染症を合併していなければ性器に変化をきたすことはありません。泌尿器科でよく見る疾患は次の通りです。

尿路の細菌感染症を尿路感染症 (urinary tract infection;以下UTI)といい, 腎盂腎炎 ..

クラミジアは淋菌と同様、男性には尿道炎、精巣上体炎、女性には子宮頸管炎などをきたしますが、その症状は淋菌よりは軽度です。自覚症状に乏しい場合も多くあります。30%程度は淋菌と同時に感染しているのでその場合は強い症状が出てきます。パートナーが複数いる女性の1/4にクラミジアが存在すると言うデータもあります。症状が乏しいため、きちんと治療していない可能性が示唆されます。診断には尿からクラミジア核酸検出するSDA法やTMA法などの方法があります。淋菌も同時に検出出来る方法もあります。治療として、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ミノサイクリンの他、レボフロキサシン、シタフロキサシン、トスフロキサシンなどのキノロン系の薬剤も効果があります。しかし、淋菌が同時感染している場合、前項のように淋菌はキノロン耐性がほとんどですので注意が必要です。

性感染症の一つとして受診してくる場合がほとんどで、若い男性のクラミジアや淋菌による感染症が中心です。陰嚢部の腫脹、疼痛を訴え、尿道炎、膀胱炎の症状を伴うこともあります。また発熱を伴う場合もあります。触診で、精巣上体部の硬結や圧痛を認めます。これらの症状、所見に加え、膿尿や採血での白血球増多などの炎症所見を認めます。時に精巣腫瘍を心配して受診される方もいますが、泌尿器科専門医を受診して診察してもらうことをおすすめします。陰嚢の腫脹に関して言えば精巣上体炎、精巣腫瘍のほか、精索捻転、陰嚢水腫、鼠径ヘルニアなど重要な鑑別診断が存在し、注意が必要です。治療はクラミジアや淋菌を念頭に入れて治療するので①セフトリアキソン+アジスロマイシン、②キノロンなどの選択肢が考えられますが、現在、淋菌はキノロン耐性株が非常に多いので注意が必要です。

排尿するときや終わった後に痛む(排尿時痛)、排尿した後でもすぐにトイレに行きたくなる(残尿感、頻尿)といった症状があります。単純性膀胱炎の起炎菌は大腸菌が多く治療はセフェム内服、レボフロキサシン内服などを行います。

膀胱炎が再発を繰り返し、半年に数回もおこるようだと慢性化が疑われます。
原因疾患(膀胱癌、結石、子宮癌や直腸癌の膀胱浸潤など)を検査する必要があります。
治療としては抗生剤の内服が必要ですが、抗生剤が効きにくい(耐性菌)が発生している可能性あり専門医で診察を受けましょう。


現在の医療環境はさまざまな耐性菌の出現により方針転換をせまられているが,尿路・性器感染症領域において

前項で述べた膀胱炎、腎盂腎炎以外の泌尿器感染症として男性における前立腺炎・精巣上体炎があります。前立腺・精巣上体は精液に関わっている臓器で、性器感染症に分類します。

複雑性尿路感染症では、原因への介⼊が必要なことが多く、⼀般的には経静

下腹部痛、頻尿、残尿感、排尿時痛などの症状あり
急性膀胱炎と違い尿に細菌を認めない膀胱のアレルギー性病変と言われています。
治療は水圧拡張、抗アレルギー薬の投与、膀胱内注入療法(キシロカイン、DMSO)などを行います。

特徴: 広範囲の細菌に対して効果があり、特に尿路感染症や呼吸器感染症に使われます。 ..

単純ヘルペス(HSV)1型もしくは2型の感染で性器に潰瘍、水疱性病変をきたし、しばしば痛みを伴います。HSVは感染後、仙髄神経質に潜伏感染し、再活性化されると神経を伝って下行、支配領域の神経先端皮膚に病変を形成します。診断にはウイルス分離、血清抗体測定、PCRによる検出などありますがいずれも迅速な診断とはいきません。既往歴や陰部の診察、症状などからHSVを疑ったら治療を開始するほうが良いかもしれません。治療としてはアシクロビルの内服になります。アシクロビルはHSV の持つチミジンキナーゼによりリン酸化され、DNA 鎖に取り込まれ、DNA 鎖の伸長反応を止めることでウイルス増殖を抑制します。つまり、ウイルス感染細胞にのみ働きますので非常に安全な薬です。しかしあくまでウイルスDNA複製を止めるだけで、潜伏しているウイルスまで拝上することは出来ず、状態によってはまた再発は起こることを十分に話しておくことが重要です。

[PDF] 効能・効果,用法・用量,使用上の注意(案)及びその設定根拠

【11.1.1】ショック,アナフィラキシー〔ショック,アナフィラキシー(初期症状:紅斑,悪寒,呼吸困難等)が発現〕【11.1.2】中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN),皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)【11.1.3】痙攣【11.1.4】QT延長,心室頻拍(torsade de pointesを含む)【11.1.5】急性腎障害,間質性腎炎【11.1.6】劇症肝炎,肝機能障害,黄疸〔劇症肝炎,肝機能障害,黄疸(初期症状:嘔気・嘔吐,食欲不振,倦怠感,掻痒等)が発現〕【11.1.7】汎血球減少症,無顆粒球症,溶血性貧血,血小板減少〔汎血球減少症,無顆粒球症(初期症状:発熱,咽頭痛,倦怠感等),ヘモグロビン尿等を伴う溶血性貧血,血小板減少が発現〕【11.1.8】間質性肺炎,好酸球性肺炎〔発熱,咳嗽,呼吸困難,胸部X線異常,好酸球増多等を伴う間質性肺炎,好酸球性肺炎が発現。投与中止。副腎皮質ホルモン剤を投与〕【11.1.9】偽膜性大腸炎等の血便を伴う重篤な大腸炎〔腹痛,頻回の下痢等が認められた場合には投与中止〕【11.1.10】横紋筋融解症〔筋肉痛,脱力感,CK上昇,血中及び尿中ミオグロビン上昇等を特徴とし,急激な腎機能悪化を伴う横紋筋融解症が発現〕【11.1.11】低血糖〔低血糖性昏睡に至る例も報告。糖尿病患者(特にスルホニルウレア系薬剤やインスリン製剤等を投与している患者),腎機能障害患者,高齢者で現れやすい〕【11.1.12】アキレス腱炎,腱断裂等の腱障害〔腱周辺の痛み,浮腫,発赤等の症状が認められた場合には投与中止。臓器移植の既往のある患者で現れやすい。[9.8.1参照]〕【11.1.13】錯乱,せん妄,抑うつ等の精神症状【11.1.14】過敏性血管炎〔発熱,腹痛,関節痛,紫斑,斑状丘疹や,皮膚生検で白血球破砕性血管炎等の症状が認められた場合には投与中止〕【11.1.15】重症筋無力症の悪化【11.1.16】大動脈瘤,大動脈解離〔[8.3,9.1.5参照]〕【11.1.17】末梢神経障害〔しびれ,筋力低下,痛み等の症状が認められた場合には投与中止〕

内服薬のCEXは、外来での皮膚軟部組織感染症や尿路感染症の治療に便利な薬剤です。 ..

結石が尿管にカントンし腎臓に水がたまり炎症を併発する感染症です。糖尿病をお持ちの方やご高齢者などに多く38度以上の発熱、背部痛などの症状あり、すぐにショック状態に陥ることもある。場合によっては腎臓に貯まった水を尿管にカテーテルを挿入し貯まった水を排出し抗生剤による加療が必要です。

妊婦の感染症は,性器感染症,尿路感染症,性感染症,呼吸器感染症などさまざまな ..

狭窄や排尿障害、残尿、異物の存在、カテーテルの留置、糖尿病などの基礎疾患を持つ場合の尿路感染症のことでしばしば難治です。治療前の尿培養を提出することが必要となりますが、最も早く結果の出るグラム染色の結果も重要です。グラム陽性球菌もしばしば分離され、その場合黄色ブドウ球菌や腸球菌を視野に入れた治療となります。グラム陰性桿菌中心の場合緑膿菌も考えられます。抗生剤による治療に加え、基礎疾患の治療も同時に行うこととなります。

副鼻腔炎,気管支炎,肺炎・尿路感染症:無症候性細菌尿,膀胱炎,腎盂腎炎 ..

頻尿、排尿時痛、残尿感などの症状あり38度以上の発熱を伴います。起炎菌は大腸菌が多い原因としては前立腺肥大症などに伴う排尿困難により感染を併発することが多い治療はニューキノロン系の内服、ペニシリン系やセフェム系の注射などを行います。

5-2 複雑性尿路感染症 / 多剤耐性菌が感染することもある ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 130

腎盂腎炎は、膀胱炎の症状に加え上部尿路の局所症状として側腹部痛や感染をきたしている側の肋骨・脊椎角部叩打痛などや、全身症状としての発熱が加わります。時に、悪心、嘔吐などの消化器症状も加わります。起因菌の種類は膀胱炎と同様グラム陰性菌が多くなっています。診断も上記症状に加え検尿所見で白血球の増多が確認できます。全身症状が加わるので採血でも白血球上昇、CRP高値、赤沈亢進などが確認できます。症状の程度によっては外来加療も可能な例もありますが、入院が必要となる場合も多くあります。入院加療の場合、抗生物質の点滴静脈投与による治療となります。治療には①セフェム系抗生物質、②点滴静注キノロン系抗生物質、③βラクタマーゼ阻害剤配合ペニシリン系抗生物質などが考えられます。Empirical Therapyとして開始し、3日を目安に改善が無い場合、尿培養・感受性試験を確認し切り替えます。通常14日間の治療を要します。次に述べる複雑性尿路感染としての腎盂腎炎の場合、非常に重症化する例も見られ、集学的治療を要する場合もあり注意が必要です。

膀胱炎などの尿路感染症で処方されることが多く、薬の副作用でMGの症状悪化を来 ..

ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染により感染部位に乳頭状腫瘍を形成、尖圭コンジローマとして泌尿器科でもよく見る疾患です。女性ではHPV16型、18型などによる子宮頚がんが有名で、最近ではHPVに対する予防接種が推奨されています。男性においても尖圭コンジローマのみならず陰茎がんを発症することも知られています。診断は臨床症状から容易であり、PCR法を用いてHPVの型も判別可能です。尖圭コンジローマの治療としてはイミキモドクリームや凍結療法、電気焼灼などがあります。イミキモドクリームはTLR7に対するリガンドです。TLRは自然免疫機構の受容体として存在するため、TLRの活性化が炎症性サイトカイン産生を誘導し、抗ウイルス活性を示します。そのため局所に発赤など副作用もありますが、使用法をきちんと守っていればさほど問題とならないので、処方する際にはしっかり話しておくことが重要です。

妊婦さんはさまざまな理由により膀胱炎などの尿路感染を起こしやすく、急性 ..

下腹部および陰嚢と肛門の間の不快感、鈍痛および排尿時の違和感などの症状あり排尿時痛、頻尿、残尿感などの排尿症状もある。
肛門から指を入れて前立腺マッサージ後、前立腺液を採取し細菌性、非細菌性、前立腺痛(プロスタディニア)3タイプに分類される。慢性細菌性前立腺炎、非細菌性前立腺炎では、まず2週間~1ヶ月程度抗生物質を内服します。前立腺痛のなかにはいろいろ基礎的な病態が含まれている可能性があります。骨盤腔内のうっ血が原因と考えられる症例の場合には消炎鎮痛剤、植物製剤、漢方薬の内服治療が有効です。精神的要因の関与の強い症例では、場合によっては心療内科の受診をお勧めすることもあります。