日本ではマクロライド耐性溶連菌が増加しているのでクラリスロマイシンやアジ
A:異なる種類の溶連菌に繰り返し感染している場合と、溶連菌の保菌者がウイルス感染を繰り返している場合の2通りが考えられます。無症状にもかかわらず溶連菌がのどに住み着いていることがあり、このような人を保菌者といいます。保菌者が、ウイルス性の咽頭炎を起こしたとき、検査では溶連菌が検出されるので、一見、溶連菌による咽頭炎にみえてしまいます。区別するためには、(1) 溶連菌による咽頭炎であれば、抗菌薬の内服から24時間以内に症状が改善すること、(2) 無症状時にものどから溶連菌が検出されること、(3) 周囲の流行状況、から総合的に判断します。
なお、無症状の保菌者は、他の人へ感染させる危険は低く、また本人に合併症を起こすこともありません。無症状の保菌者への治療は不要です。
溶連菌は細菌の一種で様々な菌種がありますが、咽頭炎の原因となるのは主に(以下、 )という菌種になります。この菌に感染している人が咳やくしゃみ、会話をした際に、菌が含まれたしぶきが口から飛び、これを近くにいる人が吸い込むことによって、ヒトからヒトへ感染を起こします(飛沫感染)1)。また、接触感染(菌の付着した手で口や鼻に触れ感染)や経口感染(食品を介して感染)によって、膿痂疹(とびひ)や食中毒の原因になることも報告されています。
溶連菌感染症は、感染症発生動向調査*2)において5類感染症の小児科定点把握疾患「A群溶血性レンサ球菌咽頭炎」として位置づけられており、成人も感染し得る病気ですが、幼児から学童期の小児に多く発症し、家庭内や学校等の集団発生が多いことが特徴です。流行の時期としては、冬季及び春から初夏にかけての2つの時期に多く発生します3)(図1)。
A:リウマチ熱とは、溶連菌による急性咽頭炎の2~3週間後に、関節痛や心炎、舞踏病を起こす病気です。溶連菌の感染を繰り返して心炎がくすぶり続けると、10年以上たってからリウマチ性弁膜症になります。これを防ぐため、リウマチ熱にかかったら、10年以上の長期にわたって抗菌薬を飲み続けなくてはなりません。舞踏病とは、不随意運動といって手足が勝手にピクついたりして不器用になります。落ち着きがなくなったり、学校の成績が急に下がったりすることで気づかれることもあります。不思議な症状ですが、鎮静薬(フェノバルビタールなど)で症状を抑え、時間がたてば自然によくなります。
溶連菌による急性咽頭炎にかかっても、発症から9日以内に抗菌薬で治療すれば、リウマチ熱は防げます。急性咽頭炎がよくなっても抗菌薬を一定期間飲み続けてもらうのは、リウマチ熱を予防するのが目的なのです。
クラリスロマイシン 溶連菌 5歳について | 医師に聞けるQ&Aサイト
溶連菌感染症の診断は、主に臨床症状と迅速抗原検査によって行われます。
2007~2010年に14都道府県(北海道・富山県・秋田県・岩手県・福島県・東京都・大阪府・高知県・香川県・愛媛県・鳥取県・山口県・大分県・佐賀県)の医療機関で分離されたS. pyogenes 1,272株について、9種類の抗菌薬に対する薬剤感受性試験を実施した。その結果、β-ラクタム系抗菌薬のMICはそれぞれアンピシリン(ABPC)0.03μg/ml、セファレキシン(CEX) 0.5μg/ml、セフジトレン(CDTR) 0.008μg/mlおよびセフジニル(CFDN) 0.015μg/mlであり、すべての株が感受性であった。一方、β-ラクタム系抗菌薬以外の5薬剤では、すべての薬剤に耐性株が認められた。テトラサイクリン(TC)耐性株は271株(21%)、クロラムフェニコール(CP)耐性株は4株(0.3%)、EM耐性株は577株(45%)()、クラリスロマイシン(CAM)耐性株は574株(45%)、リンコマイシン系抗菌薬であるクリンダマイシン(CLDM)耐性株は157株(12%)であった()。
溶連菌による咽頭炎の症状としては、2~5日の潜伏期を経て、突然ののどの痛み、発熱、全身倦怠感、嘔吐等が現れます。菌が産生する発赤毒素に対して免疫のない人は発熱の後、全身症状として身体や手足に紅い皮疹が現れ、顔面では額と頬が紅潮し、皮疹がおさまった後、指の皮がむけることがあります(猩紅熱)3)。また、舌が苺状に赤く腫れる苺舌となることも特徴です。合併症として、急性糸球体腎炎やリウマチ熱等を引き起こすこともあり、合併症を防ぐためにも、早期の診断・治療を受けることが重要です。早期診断のために、溶連菌の迅速診断キットが医療機関で利用されており、数分で結果を知ることができます。
溶連菌のワクチンは実用化されておらず、治療にはペニシリン系薬剤を使用しますが、ペニシリンに対してアレルギーがある場合にはエリスロマイシン、クラリスロマイシンを使用します。また、セフェム系薬剤を使用することもあります。これらの抗菌薬は病気の原因である溶連菌に効果のある薬ですので、勝手に飲むのをやめたりせず、決められた期間にきっちりと飲みきることが大切です。厚生労働省の「保育所における感染症対策ガイドライン」1)の中では溶連菌感染症の治療時の登園再開の目安として、「抗菌薬の内服後24~48時間が経過していること」とありますが、病状により医師が感染のおそれがないと認めるまでは登園・登校停止の措置が必要と考えられますので、医師の指示に従うようにしましょう。
A:昔は子どもの心臓病で最も多かったのがリウマチ熱、リウマチ性弁膜症でした。
アメリカのデータでは、20世紀初頭は10万人あたり年間200人の発生頻度だったのが、1940年代には10万人あたり50人に、現在では10万人あたり0.5人まで減っています。日本小児循環器学会の集計では2014年にリウマチ熱を発症した子どもは、全国で7人でした。リウマチ熱、リウマチ性弁膜症が激減した理由として、二つの要因が考えられています。
まず第一に、そもそもリウマチ熱を起こしやすい血清型の溶連菌が減ったことがあります。溶連菌による急性咽頭炎は今でも子どもによくみられますが、溶連菌の中にもリウマチ熱を起こしやすい型とそうでないものがあります。不衛生な環境で子どもたちが密集して生活していると溶連菌感染が広がっていきます。生活環境がよくなって感染の連鎖が絶たれたことにより、リウマチ熱を起こしやすい血清型の溶連菌が先進国からほぼ消えてしまったと考えられます。溶連菌による急性咽頭炎自体は自然に治ります。もはやリウマチ熱を心配する必要がないのであれば、日本においては、溶連菌感染症を一人残らず見つけて全例に抗菌薬を投与する、という意義はあまりないと言えるでしょう。
第二の要因として、急性咽頭炎に対して抗菌薬による治療が行われるようになったということも関係しているでしょう。いずれにせよ、日本を含む先進国では、リウマチ熱、リウマチ性弁膜症は非常にまれな病気になりました。溶連菌による急性咽頭炎にかかっても、抗菌薬による治療がなされれば、まず心配はいりません。血液検査で血清抗体(ASO, ASKなど)が上昇していることだけを根拠に、リウマチ熱と診断するのは適切ではありません。
クラリスロマイシンなどのマクロライド系は耐性の可能性があります。
のどが痛く風邪かな(咽頭炎や扁桃炎)と思い、病院に行ったら、「溶連菌感染症です」と言われたことはないでしょうか?今回は、のどが痛くなる感染症の原因の一つであるA群溶血性レンサ球菌(以下、溶連菌)について紹介します。
ペニシリン・セフェムアレルギーの場合マクロライド系(クラリスロマイシンなど)を使用しますが耐性菌も少なくないので注意が必要です。
ヒツジまたはウマの血液を含んだ培地に咽頭ぬぐい液を塗抹し、37℃で1~2日培養後、培地に発育してきた菌の集落(コロニー)を観察します。溶連菌は、菌が産生する毒素により血液を溶かすこと(β溶血)が特徴で、図2に示したように、コロニーの周りが透けて見えます。
もし、ペニシリン系の抗生物質にアレルギーがあるなどで使用できない場合にはエリスロマイシン、クラリスロマイシンなどを内服します。
①で発育したβ溶血コロニーをグラム染色し、顕微鏡で菌の形を観察します。溶連菌は紫色の丸が連鎖した形(グラム陽性連鎖球菌)になります(図3)。
クラリスロマイシンやレボフロキサシンなどは効果が弱めで、耐性菌も増えているため積極的には推奨されておりません。 合併症
A:溶連菌感染は複数回かかることがあります。ヒトに感染して病気を起こすA群溶血性連鎖球菌は、菌の表面にあるM蛋白の種類によって220以上もの血清型に分類されます。溶連菌に1回かかっても、M蛋白が異なる溶連菌には免疫ができません。子どものうちに複数回の溶連菌感染を起こすことはありえます。ただ大人になると、流行しやすいタイプの溶連菌にはたいてい免疫ができてしまうので、溶連菌感染症にかかりにくくなります。
なお、M蛋白の種類に応じて、リウマチ熱を起こしやすいかどうか、急性糸球体腎炎を起こしやすいかどうかが決まります。地域で子どもの急性糸球体腎炎が流行している場合は、溶連菌感染後には特に注意が必要です。
抗生剤(抗菌剤)の適正使用 (後編) | みうら小児科クリニック
菌に3%過酸化水素水を垂らして、持続性の気泡を生じた場合を陽性とし、気泡を生じない場合を陰性とします。この試験で陽性を示すのは黄色ブドウ球菌で、溶連菌は陰性となります(図4)。
のどの細菌感染症である「溶連菌感染症(溶連菌性咽頭炎)」は、のどの「発赤 ..
溶連菌の細胞壁(細菌の表面を覆う厚さ10~89nmの膜)にある細胞壁多糖体(C多糖体)の違いが、Lancefield博士によって発見され、A~V群(I,Jを除く)の溶連菌に分類されています。Lancefield血清群別を行うキットを用い、A群であるかを確認します4)。
のは、原則としてA群β溶連菌による咽頭炎で、その治療は原則としてアモキシシリンで行う。 ..
β溶血を示す溶連菌の中で、(A群)のみがピロリドニルアリルアミダーゼ(PYR)という酵素を産生します。この性質を利用した市販のキットを用い、PYRの有無を確認し、陽性だったものを(A群)とします4)。
[PDF] 亀田感染症ガイドライン 咽頭炎(version 2)
ことがあります。特に5~12歳くらいに多くみられます。咽頭炎の1~2週間後、膿痂疹なら3~6週間後に、突然、血尿や高血圧、むくみが出て発症します。尿検査をしてはじめて血尿が判明する程度の軽症のこともあれば、目で見て分かるほど尿が赤くなったり、高血圧のせいで頭痛やけいれんを起こすこともあります。ただ、ほとんどの場合、入院して安静にしてもらい、塩分や水分を制限するなどの治療をきちんとすれば、なおります。以前は、溶連菌感染症の2~4週間後に尿検査をすることもありましたが、とされています。
A群溶血性レンサ球菌(Streptococcus pyogenes )の薬剤感受性
菌体表層には④で述べたC多糖体の他に、MタンパクとTタンパクがあり、このタンパクの違いを見ているのが血清型別になります。Tタンパクによる型別(T型別)はどのような溶連菌が流行しているのかを調査する手段として有効で、T型別を行い、分離した溶連菌がどのT型であるかを決めています。一方、Mタンパクによる型別(M型別)は病原性を見る手段として重要ですが、市販血清がないため、それに代わる方法として、溶連菌のMタンパクを遺伝学的に型別する方法(型別)が用いられています4)。
もう一つ、小児の感染症で困っているのが溶連菌感染症です。溶連菌 ..
溶連菌が引き起こす病気として、咽頭炎の他、劇症型溶血性レンサ球菌感染症(streptococcal toxic shock syndrome;以下、STSS)があり、感染症発生動向調査の5類感染症(全数把握)として位置づけられています。
溶連菌による咽頭炎は子どもに多い病気ですが、STSSは大人に多い病気です。重篤な基礎疾患を持っていなくても突然発病することがあり、四肢の疼痛、腫脹、発熱、意識障害等の初期症状から始まり、発病から病状の進行が非常に急激かつ劇的で、発病後数十時間以内には軟部壊死、急性腎不全等を引き起こすことから「ヒト食いバクテリア」とも呼ばれています。STSSは咽頭炎の場合とは異なり、傷口から感染することが多く、60~70歳代に多く、発症例のうち約3割が死亡するとされています5)。STSSの患者発生は1~6月に多く、原因となる溶血性レンサ球菌は、A群が多いですが、B群やG群等も報告されており、近年報告数が増加しています5)(図5)。
STSSの発症機序は不明なことが多く、国立感染症研究所と全国の地方衛生研究所が協力して詳細な解析を行っています。
厚生労働省もはっきり言っているように、「喉が赤くて、熱がある場合は、必ず溶連菌感染症を調べること」としています。 ..
咽頭炎の治療薬として用いられるβ-ラクタム系抗菌薬に対して耐性のS. pyogenes は、現在のところ検出されていない。しかし、マクロライド系やリンコマイシン系抗菌薬に耐性のT1型、T25型、T12型およびT4型など、咽頭炎や劇症型感染症で多く分離される株で近年耐性株が増加している。そのため溶血性レンサ球菌感染症の治療において、抗菌薬の選択には注意が必要と考えられる。
溶連菌感染症の合併症として重要なのがリウマチ熱(溶連菌感染によって体内にできた ..
とびひは、黄色ブドウ球菌でも起こります。黄色ブドウ球菌は、溶連菌と違って、抗菌薬が効きにくい耐性菌が多いです。治りが悪い場合は、黄色ブドウ球菌も考えて、抗菌薬を変更します。