Sglt2阻害薬は,従来の大規模前向き臨床試験により,糖尿病の有無に
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最も特別であった点は,複数の論文が同時に出版されたことである。大規模臨床研究の多くは,メイン解析が発表された後に,そのデータを用いて複数のサブ解析が行われ,臨床的に重要な知見をもたらす。これらがより早期に発信されることは,より早く臨床現場に届けられることを意味するために,当然できる限り早期に情報が発信されることが望ましいと言える。DELIVER試験のチームは,欧州心臓病学会での発表と同時に,メイン解析とサブ解析合わせて計11本を同時出版した(表2)。これほど多くの論文が同時出版されたのは,おそらく過去にはなかったと思われ,多くの医療者・研究者の目を引いた。達成できた背景には,Solomon教授とMcMurray教授の強い信頼と協力関係があったことは言うまでもない。加えて,両PIそして両施設は過去にも多くの大規模臨床研究を成功させてきたために,統計解析や論文執筆に関するノウハウが既に共有され十分な経験が蓄積されていたことも一因であろう。さらに,同時出版を可能にするには迅速な論文レビューや手続きが必要である。これには,PIらとの強い信頼関係の下,数多くのジャーナルからの多大な貢献が必須であった。迅速な対応をいただいた各ジャーナルのエディターやレビュアーには,非常に頭が下がる思いである。もちろん,DELIVER試験のスポンサー企業であるアストラゼネカ社や関連学会からのサポートも重要であった。筆者は2021年の夏より英Glasgow大に所属しMcMurray教授に師事しており,論文作成への貢献が認められ,幸いいくつかの論文に著者の一人として加わることができた。
アストラゼネカは2022年11月8日のプレスリリースで、第III相DELIVER試験において、フォシーガ(一般名:ダパグリフロジン)によって駆出率が軽度低下または保持された心不全患者の症状の負担感および健康関連の生活の質(QOL)を改善したと発表した。
第III相DELIVER試験の事前に規定された解析結果から、プラセボ群と比較して標準治療にフォシーガを追加した併用療法(フォシーガ群)で、症状負荷、身体的制限およびKCCQ平均スコアによる評価においてQOLが改善した。こちらは治療開始から1ヵ月という早期の治療ベネフィット達成となっていた。このベネフィットは8ヵ月時点でも維持されており、プラセボ群と比較して、総症状スコアで平均2.4点、身体的制限で1.9点、臨床サマリースコアで2.3点、全体サマリースコアで2.1点の改善が認められた(すべてp<0.001)。また、8ヵ月時において、プラセボ群と比較してフォシーガ群で大幅な悪化を示した患者さんは少なく、多くの患者さんで、評価したKCCQドメインすべてにおいて健康状態の改善を示し、スコアの軽度(5点以上)、中程度(10点以上)、大幅(15点以上)な増加が確認されている。第III相DELIVER試験におけるフォシーガの安全性および忍容性プロファイルはこれまでに報告されたプロファイルと一貫していた。
結果に関しては2022年米国心臓協会学術集会(AHA2022)で発表、Journal of the American College of Cardiology誌に掲載されている。
海外の大規模臨床試験で寿命を延ばす効果が認められ、従来のACE阻害薬 ..
アストラゼネカは「フォシーガ錠5mg、10mg(一般名:ダパグリフロジンプロピレングリコール水和物、以下フォシーガ)」の添付文書が改訂されたことを機に、「慢性心不全治療に残された課題と選択的SGLT2阻害剤フォシーガが果たす役割」と題して、2023年3月2日にメディアセミナーを開催した。
セミナーでは、はじめに阪和病院・阪和記念病院 統括院長・総長 北風 政史氏より、「慢性心不全治療の現状とDELIVER試験を踏まえた今後の展望」について語られた。
日本では、主な死因別死亡において心疾患による死亡率が年々増加しており、2021年では14.9%と、がん(26.5%)に次いで多かった。心疾患の中でも心不全は5年生存率が50%と予後が不良な疾患であることが知られている。
心不全は左室駆出率(LVEF)の値によって、3つの病態(HFrEF:LVEF40%未満、HFmrEF:LVEF40%以上50%未満、HFpEF:LVEF50%以上)に分類されるが、これまで治療法が確立されていたのはHFrEFのみであった。しかし、このたびDELIVER試験により、フォシーガがLVEFにかかわらず予後を改善するという結果が示され、添付文書が改訂された。
・幅広い層を対象にしている
組み入れ時にLVEF40%を超える患者(組み入れ前にLVEF40%以下であった患者も含む)を対象とした。
・投与開始後早い時点で有効性が示された
主要評価項目である主要複合エンドポイント(心血管死、心不全による入院、心不全による緊急受診)のうち、いずれかの初回発現までの期間は、フォシーガ10mg群でプラセボ群と比較して有意に低下し、この有意なリスク低下は投与13日目から認められた。
・LVEFの値によらず有効性が認められた
全体集団とLVEF60%未満群で、主要複合エンドポイントのうちいずれかの初回発現までの期間を比較したところ、フォシーガ群におけるリスク低下効果が同等であった。この結果から、LVEF60%以上の心不全患者にもフォシーガが有効であることが示唆された。
現在、HFpEFの薬物療法におけるSGLT2阻害薬の位置付けは、海外のガイドラインではIIa、国内ではガイドラインへの記載はない。しかし、DELIVER試験などでHFpEF治療におけるSGLT2阻害薬の知見が蓄積された今、ガイドラインによる位置付けが変更される可能性がある。
続いて矢島 利高氏(アストラゼネカ メディカル本部 循環器・腎・代謝疾患領域統括部 部門長)より「慢性心不全領域におけるダパグリフロジンの臨床試験プログラム」について語られた。
矢島氏はDAPA-HF試験とDAPA-HF/DELIVER試験の統合解析結果について解説し、DAPA-HF/DELIVER試験の統合解析によれば、LVEFの値によってフォシーガの有効性に差はないことが示されていると述べた。
今回、フォシーガの効能または効果に関する注意が、LVEFによらない慢性心不全に変更されたことで、今後、慢性心不全治療がどのように変化していくか注視したい。
■参考文献
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本試験はAstraZenecaの資金提供を受けた
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本試験はAstraZenecaの資金提供を受けた
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本論文作成に当たっては、AstraZenecaの資金提供を受けた
次に,HFpEF患者に対してもSGLT2阻害薬の効果が得られることが大きく期待されたわけである。大規模介入試験でHFmrEFまたはHFpEF患者を対象にSGLT2阻害薬の効果が検証された初めての報告は,2021年に発表されたEMPEROR-Preserved試験である。試験薬に用いられたエンパグリフロジンは主要評価項目である心血管死もしくは心不全入院の複合イベントを有意に抑制することが示された(ハザード比0.79[95%信頼区間:0.69~0.90])(表1)。これは,HFpEF患者に対して初めて薬剤の予後改善効果が示されたという点で,心不全治療における一つの歴史的な転換点であったと言える。
手技動画や患者指導、ガイドライン解説など、明日からの臨床現場ですぐに使えるコンテンツを、豊富に取り揃えています。メディカル専門の編集部が会員医師の声をもとに厳選してお届け。
「左室駆出率が40%を超える心不全患者は、治療がもっとも困難であり、利用できる治療選択肢もほとんどありません。心不全の複雑性の理解を深めるDELIVER試験の画期的な結果を発表できることを誇りに思っています。これらのデータは、2型糖尿病、慢性腎臓病、および心不全の患者でフォシーガの心腎保護作用が認められた当社の過去の研究にもとづくものです」と、同社では述べている。
そこで真に有用かどうかを調査するためには大規模臨床試験による裏付けがなされるのが一番です。 ..
DELIVER試験は、2型糖尿病の有無を問わず、左室駆出率が40%超の心不全患者の治療として、フォシーガの有効性をプラセボとの比較で評価するようにデザインされた、国際共同、無作為化、二重盲検、並行群間比較、プラセボ対照、イベント主導型第3相試験。フォシーガは、基礎治療[ナトリウム・グルコース共輸送体2(SGLT2)阻害剤の併用を除く、糖尿病や高血圧などのすべての併存疾患に対する地域の標準治療]への追加治療として1日1回投与された。DELIVER試験は、駆出率が40%超の心不全患者を対象に実施された最大の臨床試験であり、6,263例の患者が無作為化された。
TRANSFORM-HFという大規模臨床試験がJAMA今週号に発表されました。 私が ..
ハーバード大学医学部およびブリガム・アンド・ウイメンズ病院の内科学教授で、第3相DELIVER試験の主任治験責任医師を務めるScott Solomon氏は、次のように述べている。
「DELIVER試験のこのような結果は、患者や臨床現場にとって重要なものです。これまでのHFpEFに関する他の臨床試験では、左室駆出率が高い場合に効果の減弱が示されましたが、ダパグリフロジンを用いた本試験では、左室駆出率にかかわらず一貫した結果が得られました。この所見は、ガイドラインにもとづく標準的治療の早期開始を推奨する最新の治療ガイドラインを補強するものでもあり、臨床現場でのSGLT2阻害薬のより広範な使用を支持できることが期待されます」。
者を対象とした複数の大規模臨床試験において、SGLT2阻害薬は、プラセボと比較して、.
0.1%)の発現頻度はいずれもわずかだった。 「2型糖尿病患者は、心筋梗塞や虚血性脳卒中の高い発症リスクとともに、健康な人の2~5倍の心不全発症リスクを抱えている。心不全は、診断から5年後の生存率が50%であり、今回の試験結果は血糖コントロールにとどまらないより広い理解をもつという意味で大変重要だ」と、アストラゼネカのElisabeth Björk氏は言う。 副次的評価項目は名目上の有意差ではあるが、腎の複合評価項目においては、対象となった広範な患者においてフォシーガ群はプラセボ群に対して、腎症の新規発症率または悪化率を24%減少した(4.3% vs.
その後、多くの大規模臨床試験でSGLT2阻害薬の心保護作用・腎保護作用が明らかに ..
アストラゼネカ株式会社(本社:大阪市北区、代表取締役社長:堀井 貴史、以下、アストラゼネカ)と小野薬品工業株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役社長:相良 暁)は、アストラゼネカの選択的SGLT2阻害剤「フォシーガ®錠5mg、10mg(一般名:ダパグリフロジンプロピレングリコール水和物、以下、フォシーガ)」について、既承認の慢性心不全の「効能又は効果に関連する注意」に記載の「左室駆出率」に関する記載を削除、およびそれに関連する情報を追記し、日本における電子化された添付文書(以下、電子添文)を改訂したことをお知らせします。
2019年以降に発表された大規模臨床試験で、糖尿病で最も多いタイ
DELIVER試験は、2型糖尿病の有無を問わず、左室駆出率が40%超の心不全患者さんの治療として、フォシーガの有効性をプラセボとの比較で評価するようにデザインされた、国際共同、無作為化、二重盲検、並行群間比較、プラセボ対照、イベント主導型第Ⅲ相試験です。フォシーガは、基礎治療[ナトリウム・グルコース共輸送体2(SGLT2)阻害剤の併用を除く、糖尿病や高血圧を含むすべての併存疾患に対する各地域における標準治療]への追加治療として1日1回投与されました。DELIVER試験は、駆出率が40%超の心不全患者さんを対象に実施された最大の臨床試験であり、6,263例の患者さんが実薬群とプラセボ群に 無作為化されました。
主要複合評価項目は、心血管死、心不全による入院、または心不全による緊急受診のいずれかが最初に発生するまでの期間としました。重要な副次評価項目は、心不全イベントおよび心血管死の総数、8カ月時点でのKCCQの総症状スコアのベースラインからの変化量、心血管死までの期間、ならびに原因を問わない死亡までの期間などです。